令和元年の台風19号(東日本台風)で、私たちは浅川堤防決壊のリスクを改めて感じました。地球温暖化の影響か、その後も関東地方には想定外の豪雨が訪れ、私たちはいつ来るか分からない水害への備えをしておく必要があります。今月は「ハザードマップ」から、南新井地区の災害リスクを考えてみましょう。
(日野市洪水ハザードマップ|日野市公式ホームページ)
※日野市防災ガイドブック P.28
南新井地区は、浅川が氾濫した場合に想定される最大規模の浸水深として、ほとんどのエリアが0.5m~3m(2階床下までつかる程度)浸水することが予想されています。
参考:「氾濫」と「決壊」、そして「内水氾濫」とは
川の災害についての言葉を再確認しましょう。
テレビのニュースなどでも、川に関わる災害の際に、「氾濫」とか「決壊」とかの言葉が使われます。
国語辞典を見ると、大辞林4版には「氾濫」は「河川の水が堤防からあふれ出ること」、「決壊」は「堤防などが破れてくずれること」とあり、他の辞書を見ても同様の説明がされています。つまり「決壊」と「氾濫」は、どちらも洪水が発生することを表しますが、氾濫する(あふれる)のは川、決壊する(破れる)のは堤防であり、主語に違いがあります。
堤防が決壊するメカニズムには4通りあるようで、氾濫もその一つとなります。川の水位が上がり、堤防の高さを超えると、そこから水が溢れだして堤防の外側に流れ出します。この、堤防を越える水を「越水」、堤防を越える水の流れを「越流」と言います。この越水をきっかけとして、その越流で堤防が侵食されて、堤防の決壊となる場合があります。(参考:北陸地方整備局「氾濫のメカニズム」)
さらに、近年では都市化により「河川の水」以外の氾濫も起こるようになりました。気象庁のホームページでは「氾濫」を「外水氾濫」と「内水氾濫」に分類して定義しています。「外水氾濫」は「河川の水位が上昇し、堤防を越えたり破堤するなどして堤防から水があふれ出ること」で、一般的な「氾濫」を指し、「内水氾濫」は「河川の水位の上昇や流域内の多量の降雨などにより、河川外における住宅地などの排水が困難となり浸水すること」を表します。
堤防が決壊して川の水が押し寄せたわけではなくても、豪雨によって排水溝やマンホールなどから街に水があふれた場合も氾濫として定義されるのです。昨年10月の台風19号の影響で多摩川の水が排水管を逆流し、川崎市の武蔵小杉で市街地が冠水した例は記憶に新しいと思います。また「外水氾濫」も、堤防を越える「越水」を含む用語であるため、必ずしも「破堤=決壊」が起こるというわけではありません。
(参考:毎日ことば:川は「氾濫」、堤防が「決壊」)
気象庁からの「顕著な大雨や記録的な短時間の大雨を観測したときの、より一層の警戒呼びかけ」
大雨による災害発生の危険度が急激に高まっている中で、線状の降水帯により非常に激しい雨が同じ場所で降り続いている状況を「線状降水帯」というキーワードを使って解説する「顕著な大雨に関する気象情報」を発表します。詳しくは、「顕著な大雨に関する気象情報」の解説をご覧ください。
また、数年に一度しか起こらないような記録的な短時間の大雨を観測したときに、より一層の警戒を呼びかけるときには、「記録的短時間大雨情報」という情報を発表します。詳しくは、「記録的短時間大雨情報」の解説をご覧ください。
①ほんとうに、浅川の水が堤防を越えてくるの?
②家の中に、水が入ってこなければ大丈夫?
③水が来てからでも、逃げられるよね?
④穴があっても、避ければ良いよね?
8時に「避難準備・高齢者等避難開始(高齢者等避難)」が発令され、14時には南新井を含む浅川流域に「避難指示」が発令されました。その後、21時過ぎまで水位は上がり続けて、ふれあい橋付近でもあと1mで堤防を越える直前までいきました。(この頃、水位は10分間に50cm以上、上昇していました)
幸いにも、22時には雨も止み、水位も下がり始めて浅川の洪水には至りませんでした。それでも、マンホールから水が噴き出したり、水路の水が溢れたり、トイレなどの下水が逆流したりの「内水氾濫」の被害は南新井でもあったようです。
⇒大雨の情報をこまめに確認し、危ないと思ったら早めに逃げよう!
参考:リアルタイムな「川の水位」や洪水情報などは、下記で参照できます
②家の中に、水が入ってこなければ大丈夫?
ドアの外に30cm水がたまると、ドアが開かなくなってしまうよ!
⇒家の周りが水に浸かる前に安全な場所に逃げよう!2階以上への垂直避難も有効(ハザードマップで大丈夫か事前に確認する)
参考:Yahoo!防災手帳「避難=避難所ではない(垂直避難のすすめ)」
③水が来てからでも、逃げられるよね?
④穴があっても、避ければ良いよね?
川からあふれ出る水は、普段の浅川のきれいな水とは違って、泥水だよ。そして、木やゴミや看板などの、いろんなものが、一緒に流されてくるよ。そんな時、足下が見えない中を歩くと、マンホールや水路に気づかず落ちてしまうことがあるよ!
⇒長い棒などを用意し、側溝やマンホールなどにはまらないよう、棒で確認しながら十分注意して歩こう!
参考:Yahoo!防災手帳「避難をする前に思い出したいこと」
洪水時の被害を最小限にするためには、皆さん一人一人が、水害による被害のリスクを認識することが大切です。
国土交通省の「浸水ナビ」(地点別浸水シミュレーション検索システム)を活用することで、実際に河川の堤防が決壊(破堤)した場合に「どのくらい浸水するのか」「何時間で浸水が始まるのか」「何日で水が引くのか」などをイメージすることができます。
ハザードマップや浸水被害実績図とあわせて確認し、適切な避難方法の検討に役立ててください。
浅川の堤防で、南新井ふれあいサロンに一番影響の高い場所が決壊した場合の、浸水ナビによる地図画像と、浸水時の水深を示すシミュレーションイラスト
自宅が浸水するのは 「どの河川の、どの地点が決壊したときか」 が分かります。同じ場所であっても、決壊する地点によって浸水深が異なるため、最も水位が高くなる場合を知っておき、在宅避難が可能かどうか確認しましょう。
河川が決壊した場合、指定した場所が 「何分後に、どのくらい浸水するか」 がアニメーションやグラフで視覚的に分かります。決壊してから自宅が浸水し始めるまでの時間は、避難行動を検討する際の参考になるため、ぜひ調べておきましょう。
【検索の例】
①自宅を指定して、最も浸水深が高くなる地点の堤防を指定し、自宅の浸水深と経過時間を確認する
②決壊後に避難するとした場合に、安全な場所までの避難時に通る地点での浸水深と経過時間を確認する